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応募例

『くやしいけれど…』

 

小さいころ、誰だったかの披露宴に行く準備をしていて。

「やだ!」と思いっきり泣いてごねた。

だって、その着物は真っ赤な、いかにも女の子らしい可愛らしい色と柄だったから。

母は困っていた。でも私も絶対に譲れなかった。着物は着たかったけれど。

結果、私はひとりでお留守番。

ひとりでいる間、そこに転がったままの赤い着物の柄が、毬と桜の花びらだったのは覚えている。その着物の模様に見惚れながらも悔しさと悲しさはどうしようもなかった。

忘れていたけれど、成人式の振袖に青色を選んだのはもしかしたらあの日のせい?

今となってはもう着ることのできない赤い可愛らしい着物。

あ~着ておけば良かった!

でも、今はあの泣きわめくくらい意地を張ったことがなんだか、誇らしい。

今はそう思える。

小さかった私のほうが真っ直ぐだったと思うから。

 

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